1.1.クラス分け

ドイツワインのクラス分け

かつて日本酒(清酒)にも2級、1級、特級というクラス分けがあったように、現在のドイツワインにもクラス分けがあります。 ドイツワインのクラス分けは、そのワインの原料となるブドウ果汁の糖度(≒果汁の比重:エクスレ度)により決まります。 ブドウ畑自体がすでにクラス分けされている、フランスワインの考え方とは、大きく異なります。 ですから、ドイツでは指定された地域内で栽培されたブドウから作ったワインであれば、その条件を満たしさえすれば、それなりのクラスに分類されます。
 
ドイツのワイン法がなぜこのようにブドウ果汁の糖度にこだわるか、というとドイツのワイン産地は北緯50°前後とブドウ栽培の北限に近く、栽培家はブドウの糖度を上げることに面々と努力し、また、そのように糖度の高いブドウから造ったワインが高く評価されてきた歴史があるからだと、考えます。
 
実際には、どうなっているのでしょう。 お手ごろな方から順に説明します。

ターフェルヴァイン(Tafelwein)

最も糖度(エクスレ度)の低い果汁から造られる。 果汁への補糖(ブドウ糖を加えること)が認められている。 アルコール度数は、8.5~11.5度。 100%ドイツ国内で作られたブドウから造られる、ドイチャー・ターフェルヴァイン(Deutscher Tafelwein)と、EC(ヨーロッパ共同体)内のワインをブレンドした、EWGターフェルヴァインがある。 家庭での日常消費用のワイン。

ラントヴァイン(Landwein)

『地酒』の意味であるが、法律の範疇では、ターフェルヴァインの一種。 しかし、ブドウの栽培地域分類があり、ラベルには『ラントヴァイン デル モーゼル』のようにどの地方産かわかるように表記がある。 果汁の糖度は上記のラントヴァインよりも高い必要があるが、補糖は認められている。 一般的に辛口、または中辛口に造られるので、食中酒に適している。
  
上記2種類のワインは、ビン詰め出荷時にA.P.Nr.の申請が不要です。

QbA(クーベーアー)

クアリテーツヴァイン ベシュティムター アンバウゲビーテ(Qualitatswein bestimter Anbaugebiete)の略で、『地域限定上級ワイン』と訳されることが多いようです。 ドイツ国内の13の指定されたブドウ栽培地域のブドウのみから造られ、地域間のブレンドは認められていません。 原料となる果汁の最低糖度はラントヴァインより高い必要がありますが、補糖は認められています。 アルコール度数は、7.0~12.0度。 ラベルには、栽培地域名、A.P.Nr.(アーペーヌンマー、公式検査番号)、生産者名、そしてQualitatsweinの文字が必ず表記されます。 また、村名やブドウ畑名、ブドウ品種名、収穫年度を書くことも許されています。

QmP(クーエムペー)

(2007年7月以前の情報)クアリテーツヴァイン ミット プレディカート(Qualitatswein mit Pradikat)の略で、『肩書き付き高級ワイン』と訳されることが多いようです。 このクラスのワインは、もちろん上記3種類のワインより原料となるブドウ果汁の糖度が高いのですが、さらに重要な点は補糖が許されていない、ということです。 原料となるブドウ果汁の糖度と果汁のとり方によって、さらに6つのカテゴリーに分けられます。 
 
ラベルに記載される項目は、①栽培地域名、②ベライヒ名、または村名+畑名、③肩書き、④Qualitatswein mit Pradikat、⑤A.P.Nr.、⑥ビン詰め人の氏名、⑦ビン詰め人の所在、⑧ビン詰め方法が必須の項目です。 これに加えて、⑩ブドウ品種名、⑪収穫年度も記載してもよいことになっています。
  
芸術的、とか語るに足る、と言われるドイツワインはすべてこのクラスに含まれます。

QmPワインの種類

ワインの元になるブドウ果汁の糖度と搾り方により、カテゴリーがきめられています。 最低糖度(エクスレ度)は使われるブドウの品種や地域によって異なります。 詳しくは、下の表のとおりです。
わたしのような素人が知りうる情報はこの程度ですから、各カテゴリーに属するワインの特徴を説明するのは、非常に難しいことです。 結局全体的な説明ということになれば、甘味の違いが違いなのだ、といった程度の説明になってしまいます。 しかし実際にはヴィンテージ、地域、畑、そして作り手によって大きな違いが出てくるのが、QmPワインの特徴ともいえます。 ですから、ビン詰め業者の1本¥2,000のアウスレーゼもありますし、一方、1本¥20,000でも手に入らないアウスレーゼや¥10,000もするカビネットもあるわけです。
同じ醸造業者の同じ畑の同じ年度のワインでしたら、一般的には果汁の糖度が高いほど高価になります。
 
お手ごろな方から順に説明します。

カビネット(Kabinett)

以下6種類のワインの中ではもっとも糖度が低いものです。 できあがったワインは甘味が少ないのでブドウ品種や土地がらのい個性、作り手の違いなどがわかりやすいワインと言われています。 食中酒にもっとも適するのが、このワインです。

シュペトレーゼ(Spatlese)

シュペトレーゼとは、『遅摘み』という意味で、カビネットよりも法律できめられた日数遅らせて収穫されたブドウから造られます。 糖度が高い分一般的にはカビネットよりも甘味が強くなりますが、辛口にしたてたシュペトレーゼもあり、これは食中酒としても適します。

アウスレーゼ(Auslese)

アウスレーゼとは、『房選り』という意味で、十分に熟したブドウの房だけを選んで造られたワインです。 一般的にはデザートワインの範疇です。 ブドウが不作の年には造られません。

ベーレンアウスレーゼ(Beerenauslese)

ベーレンアウスレーゼとは、『粒選り』という意味で、十分に熟したブドウの房からさらに果粒を選んで造られたワインです。 アウスレーゼよりもさらに糖度が高いので、デザートワインとしてや特殊な食材(たとえばフォアグラ)などにあわせます。 ブドウの実りがすばらしい年にしか造られませんので、目にすることも少なく、高価です。

アイスヴァイン(Eiswein)

ブドウが木になったままの状態で、自然の寒さで凍りついたものをとけないうちに搾った果汁から造られる、まれなワインです。 通常ならばカビネットやシュペトレーゼ程度の糖度の果汁しか得られないブドウでも凍った状態で搾ることで、糖度の高い果汁が得られます。 (品の無い食べ方ですが)シャーベットに口をあててチュウチュウ吸うと、お皿には味気の無い氷が残り、もとのシャーベットより味の濃い汁が味わえるのと同じです。
以前はアイスヴァインは、ワインのカテゴリーの添え言葉で、アイスヴァイン-アウスレーゼとか、アイスヴァイン-ベーレンアウスレーゼと言っていたのですが、1971年以降はアイスヴァイン自体がカテゴリーになり、ベーレンアウスレーゼと同じ糖度の果汁から造られることになっています。 ワインにふくまれるすべての要素が濃縮されることから、甘味も酸味も強いワインにしあがることが多いようです。

トロッケンベーレンアウスレーゼ(Trockenbeerenauslese)

ボトリティス・シネリアという菌に感染して、ブドウ果実の水分が蒸発してしまったようになった果実のみを選んで造られるワインです。 この状態を『貴腐』と呼び、この方法で造られたワインを『貴腐ワイン』ともいいます。 ボルドーのソーテルヌ地区の甘口白ワインやハンガリーのトカイアスーエッセンシアも同じ貴腐ブドウから造られるワインです。 質的な豊作と貴腐菌の感染が重ならないとできないので、まれで高価なワインとなります。

地域による最低エクスレ度の違い

ラインガウとモーゼル・ザール・ルーヴァーのデータですが、ワインのクラスと元になるブドウ果汁の最低エクスレ度の表です。 エクスレ度とは、純水をの比重を1000とした場合のブドウ果汁の比重から、1000を引いた値です。 つまり、純水に対して、1150の比重のブドウ果汁はエクスレ度150、となるわけです。 ブドウ果汁の比重をきめる要素は、糖分だけではありませんから、エクスレ度=糖度というわけではありませんが、わたしが入手し得たすべての解説書では、エクスレ度と糖度を同等にあつかっていました。
  
QbA、ラントヴァイン、ターフェルヴァインは補糖が認められています。 補糖とは、ワインの原料となるブドウ果汁に糖分添加をすることです。 たとえば、エクスレ度44のターフェルワインの元となるブドウ果汁では、その糖分すべてがアルコール化したとしても、できあがったワインのアルコール度は約5度にしかなりません。 それでは、ターフェルワインの最低アルコール度数8.5度より低くなってしまいますので、糖分を添加することにより、できるアルコールの量を増やすわけです。
  
カテゴリー ブドウ品種 ラインガウ モーゼル
最低エクスレ度 潜在アルコール度 最低エクスレ度 潜在アルコール度
TBA すべて 150 21.5 150 21.5
ベーレンアウスレーゼ すべて 125 17.7 110 15.3
アイスヴァイン すべて 125 17.7 110 15.3
アウスレーゼ リースリング 95 13.0 83 11.1
その他白 100 13.8 88 11.9
105 14.5 - -
シュペトレーゼ リースリング 85 11.4 76 9.9
その他白 85 11.4 80 10.6
90 12.2 - -
カビネット すべて 73 9.5 70 9.1
QbA すべて 60 7.5 57 7.1
ラントヴァイン すべて 47 5.7 47 5.7
ターフェルヴァイン すべて 44 5.1 44 5.1

   


  • 最終更新:2011-09-19 13:53:24

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